和菓子・ギフト/贈り物のコラム - 京菓子處 鼓月<きょうがしどころ こげつ>
- 亥の子餅 - 十一月・霜月のお菓子
-亥の子餅 - 十一月・霜月のお菓子
気温もすっかり下がり、冬の足音が近づいてきている11月初旬。
朝と夜の寒暖差もあり体調を崩しやすくなるこの季節。そんなこの時期に食べると良いとされている「亥の子餅」という和菓子をご存知でしょうか。
この記事では、「亥の子餅」とはなにか、またその由来や歴史をご紹介いたします。
「亥の子餅」とは?
亥の子餅は、玄猪餅(げんちょもち)、厳重(げんじゅう)とも呼ばれ、イノシシの子供のような形の和菓子で、平安時代の宮中儀式から続く歴史あるお菓子です。
特に決まった形・色・材料はなく、餅の表面に焼きごてを使い、猪やうり坊(イノシシの子供)に似せた色や模様を付けたものや、餅に猪の姿の焼印を押したもの、単に紅白の餅、餅の表面に茹でた小豆をまぶしたものなど、地方により大豆、小豆、ササゲ、胡麻、栗、柿、飴など素材にちがいがあるようです。
初冬の行事「亥の子」
そもそも「亥の子餅」は西日本一帯の初冬の行事「亥の子」際に食べられるお菓子であり、「亥の子」という行事は無病息災・多産祈願の行事で、平安時代から宮廷・貴族間で行われ、農村では秋冬の収穫儀礼のひとつとして普及し、猪の多産が収量の多さに結びつき「亥の子神」は作り神・田の神として信仰されました。
「亥の子」では亥の日(現在の11月13日)に亥の子餅をみんなで食べたり、近所に贈ったりして収穫を祝いあい、子ども達は祝い言を唱えながら各戸の戸口の地面を亥子槌(藁鉄砲)で叩いて餅や祝儀をもらいます。
擦り切れた亥子槌は、主に子どもが生まれた家の屋根に放り上げるという風習があり、今も特に四国地方では残っているそうです。
「亥の子餅」はなぜこの時期に食べるのか?
旧暦の亥の月(現在の11月)の最初の亥の日・亥の刻(現在の11月13日)に亥の子餅を食べると無病息災や子孫繁栄が叶うとされてきました。
そのため、11月のこの時期の風物詩となっています。気温が急激に下がりやすいこの時期だからこそ健康を願ったお菓子が食べられていたのかもしれません。
お茶席での炉開きと「亥の子餅」
また、亥の子餅は11月に行われる茶道(お茶席)の行事「炉開き」に欠かせないお菓子でもあるそうです。
「炉開き」とは慣習として旧暦の10月(現在の11月)に行われ、半年の炉の使用の無事を祈念して亭主が炭点法を行う儀式です。炉開きが行なわれる11月は茶道において、とりわけ特別であり、「茶人のお正月」ともいわれているそうです。
茶道では、お湯を湧かすのに 5月〜10月は「風炉」と呼ばれる卓上式のものを使用します。11月からは、茶室の疊を切って備え付けられている「炉」を使います。
お客様に近い位置に釜を置き、炭火を近づけることによって少しでも暖かさを届ける、といったお客様への心遣いの一つです。
その炉開きの際にお茶菓子として出されるのが「亥の子餅」です。
なぜ亥の子餅を用いるのかというと、陰陽五行説では亥は極陰とされる水性で、火に勝る性質があることから、イノシシの性質にあやかって火災を遠ざけるという意味合いで亥の月・亥の日(11月13日)に囲炉裏(いろり)や炬燵(こたつ)を開いて火を入れ、亥の子餅を食べるという習慣が生まれたそうです。
昔は現在のようにコンクリートも鉄筋もなく、木造建築は非常に燃えやすかったために、火災は生活上最も恐れられていました。そのため験の良く、かつ肌寒くなるこの時期に炉開きを行い、亥の子餅を食べる風習が生まれたようです。
時代とともに移ろう「亥の子餅」
先に記したように、亥の子餅には特に決まった製法はなく、現在の菓子屋に並ぶ亥の子餅はそれぞれ異なった味•色•形で伝わり、菓匠により創意工夫がなされているお店や職人の個性が光るお菓子ですので、様々なお店の亥の子餅を食べ比べてみるのもこの時期の和菓子の楽しみ方の一つかもしれません。
鼓月の「亥の子餅」は鼓月謹製の栗入りこし餡を、白ごまを練り込んだ餅で包み上げており、秋のおいしさをお楽しみいただけます。
また、うり坊の背中の模様を表した焼き印は、職人の手仕事の温かさを感じていただけます。かわいいうり坊たちをイメージさせる小ぶりな大きさで食べやすいサイズに仕上げておりますので、この機会にぜひ味わってみてはいかがでしょうか。
イノシシの子である“うり坊”の形をした「亥の子餅」。
無病息災や子孫繁栄のご利益があるといわれています。
栗入りこし餡を白ごま入りの餅で包みました。
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